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今日もトト日和 TOTO'Z FACTORY フォトグラファー&デザイナーの秋山伸子です お仕事のことや日々のあれこれを綴っています 写真のサムネイルをクリックで各記事をご覧いただけます

「ヒロシマのイヌ」に思う

あえてここでは書かなかった、広島DPの犬騒動。保護団体がどうの、土地所有者がどうの、ボランティアがどうのと、まあ他の大規模レスキューによくある騒ぎとなってるなと、傍観者として思います。

新しくリンクさせていただいた、3×3 ~3匹と3人の生活~の3doglifeさんも、ご自身のブログで書かれている(コチラ)のと同じ事を私も思ってました。

「そろそろ来る」と。



ガリガリ、ボロボロの姿に「可愛そう」「なんとか引き取って回復させてあげたい」と思うのは、人として当然だと思うし、大騒ぎになったお陰?で1頭でも引き取り手が現れたことは、喜ばしい事だとは思います。

「可愛そう」という感情は人をつき動かすのに十分な要因で、よくペットショップで店員が「この子・・売れ残ってしまって・・。来週処分になるんです・・。」というのに負けてその犬を買ってしまうという話しを聞きます。これも「可愛そう」に付け入った悪質な売り方です(抱っこなんてしたらさらにイチコロ)。

でも、「広島の犬」にしても、他の犬にしても、自分のことを「可愛そうなボクちゃん」なんて思ってる犬は一頭もいないと思います。


里親として引き取られた犬は、たいてい最初は大人しいものです。
もちろん、こういう劣悪環境におかれていた犬は体力もギリギリのラインでしょう。命を繋ぐのに必死になっているので、それ以外のことは度外視されるでしょう。

ですが、そこは「広島の犬」だろうが、他の里親に引き取られた犬だろうが、犬は犬。
途中でたった1頭、全く知らない「群れ」の仲間に入れられた犬は、同じ反応を示すと思います。

腰はあくまで低く。先住犬には出来るだけ距離を置き、世話をする人間には愛想をし、歯向かいません。群れ全体に対して遠慮もします。まだ自分は部外者なんですから。

人間が「可愛そうに、幸せにしてあげるからね」なんて感情をいつまでも引きずって、アマアマに甘やかしている間に、犬はしっかりとその「群れ」を観察しています。

しばらくすると、どうやら自分は嫌だろうがナンだろうが、その群れで生きていくしかないんだなと確信を持ってくる。
絶対的縦社会の犬としては、次に考えられることは「では、自分はこの群れのどこのポジションにいけるだろうか?」です。

人間の下?それとも他の先住犬の下?もしかして一番上にいけるかな?
そういう事を、細かく細かく観察し、様子を伺っています。

この時点では「オレは強いんだぜ」なんてバカな態度をとるはずがありません。
その群れから一斉に襲われる可能性だってあるんですから。
正常な本能を持ち合わせている犬は、命をかけてのチャレンジなんてしないものです。

そしてある時期、確信をさらに深めます。
「よし、オレはあの犬の下。第二位の地位にいけるな」と。

もし、その「あの犬」がその群れの中でリーダーの役割をしている犬だとしたら?
自分はその下(第二位)。
では人間の家族は?
当然自分より下だと認識されてしまいます。
(先住犬がいなくても、人間の家族の中で誰がリーダーなのか、家族全員のポジションをきちんと見抜きます。)

その時点で犬は豹変します。

嫌な事をされたら唸る。威嚇する。噛む。
家族のいう事は全く聞かない。
家来の言う事なんて聞く必要ありませんからね。当然です。

そこで「しまった」と人間が気がついても遅いのです。

幸いにも、その犬が「自分はこの群れの一番下のポジションでいいよ」と思えば、問題も起こらないでしょう。素直に家族に服従するでしょう。
大変なのはポジションに対してアグレッシブな犬だと思います。
「オレって一番」なんて思われてしまうと、先住犬と流血ケンカ勃発なんて事も十分有り得るのです。


広島の犬のように、家庭犬として育てられたわけではない、単なる商品の犬は、トイレの躾けもされていません。家庭犬ならば当然の事が全て出来ないと思います。
ご飯もあんな飢餓状態に置かれていたのなら、人や他犬が寄るだけで警戒し、唸る犬もいるでしょうし、攻撃しようとする犬もいるでしょう。

トイレは好き放題。バリケンの中だろうがなんだろうが、したいときにしてしまうと思います。
犬は本来は綺麗好きだと思いますが、ああいう閉じ込められた環境、こまめに掃除もしてもらえない状態では、犬もそんな事言ってられません。ウンコの上で寝るしかないんですから。

犬を飼うにあたって、人が一番生理的に嫌悪感を感じる、排泄物を踏み、その上でまみれて寝るという状態。成犬だと、その習慣を変えて正しくトイレを教えるのも時間がかかります。ある程度ノウハウが分かった人でないと、「毎朝バリケンの中はウンコまみれ、犬もウンコまみれ。その犬を引っ張り出してウンコにまみれながら犬を洗う作業が延々と続く」のです。ノイローゼ状態になってもおかしくないと思います。
あの状況でそれを覚悟で引き取った一般家庭はどれくらいあるんだろう、と私は思います。

成犬で引き取った犬は、たとえ「目を覆うような可愛そう」な環境にいた犬でも、同情は必要ないと思います。
犬は犬として、きちんと自分の群れの一員に入れるという意識、そしてどんなメチャクチャな犬でもなんとかする、という覚悟がない限り、こういう複雑な事情の犬を引き取ることは、一般家庭としては非常に困難だと感じます。

一般家庭に引き取られた「広島の犬」達も、そろそろ気力体力共に回復し、「うるせ~んだよ。なんでテメーの言う事聞かなきゃなんねーんだよ。」と言い出す時期に来ているのではないでしょうか。野獣に変身した犬に「可愛そう」「幸せにして『あげる』ね」は通じないものです。

言わない犬もいるでしょうし、最初からすんなりと群れ(家族)に受け入れられ、問題なく暮らしている犬もいるでしょうが、それは本当にラッキーなのではないでしょうか。

あの「可愛そう大騒動」の中、同情だけで引き取った家庭で「こんなはずじゃなかったのに」「可愛い大人しい犬だったのに」「トイレも覚えてもらえない、もうイヤ」「こんなややこしい犬だと思わなかった」「引き取るんじゃなかった」が出てこないことを祈るばかりです。
by totozfactory | 2006-12-14 13:05 | 犬のしつけ・訓練