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今日もトト日和 TOTO'Z FACTORY フォトグラファー&デザイナーの秋山伸子です お仕事のことや日々のあれこれを綴っています 写真のサムネイルをクリックで各記事をご覧いただけます

たもん、ごめんね。

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トトが旅立って、1週間ほどは、たもんひとりでも庭に出て過ごしていました。

たぶん・・トトは一時的にどこかに行っていて、いつか戻ってくると思っていたのではないでしょうか。

次の週、「もうトトは戻ってこない」ということを認識した彼は、二度と庭に出なくなりました。

先日、病院の帰りに、車から降ろした私が「お庭でオシッコしてからお家入ろう」と言ったのですが、
座り込んで拒否。そのまま勢いよく家の玄関(2階)に向かって外階段を駆け上がって行きました。

どんなに天気でも暖かい日でも、もう一人では外には行きません。ドアを開け放っても、
玄関を開けて呼んでも、今私がいる部屋でお座りをして拒否します。
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トトが旅立った後、もともとたもんがいた部屋から、私が今いる部屋にたもんのケージを移し、
一緒に生活することになったのですが、その時ケージをベランダから出し入れしたのも、何か
すごく恐怖だったらしく、ベランダに私が出るとケージに逃げ込むか、部屋の反対側で固まります。
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おそらく、愛犬との別れとしては、私は最高だと言われる別れ方をした方ではないでしょうか。
トトはその日まで普通に生活していた。苦しむ様子もなく、横たわって事切れていた。
(ほんの1~2分前にトトはトイレに行っていました)
病気の治療も、最高だと思われる治療を積極的にしていました。
旅立った時も、治療していた病気は全く見えない状態でした。

2011年は、あちこちの川に連れて行き、たくさんたくさん泳ぎました。
楽しい事も一杯したし、美味しいものも一杯食べた。旅行も行けました。

でも、トトが旅立った後、私生活でもトラブルが続き、年が明けて私はすっかり参っていました。
なんの解決もせず、イライラする毎日。
体調も丁度同時期におかしくなり、もしかしたら悪い病気じゃないかと不安が募るように。

さらに、これほど文句ない別れはないと自分でも思っていたし、当初はショックもあって毎日
泣いていましたが、それも落ち着いた・・と思っていたのですが、日に日にトトを失った
気持ちが辛くなってきました。

こんなに泣けるのだと思うほど泣く日があり、それだけ泣いても辛い気持ちは薄れるばかりか
濃くなるばかり。

たもんも引きこもったまま、憂鬱な日々が過ぎていきます。
親しい人は心配してくれ、気遣ってくれ、何かと私を楽しい場所へ連れて行ってくれ、
優しくしてくれました。

その時は笑っているのですが、家に戻るとその落差にドーンとさらに落ち込む・・・。

こんなに辛いなら、もうここにいる意味もないかもしれない、とまで思うほど、毎日落ち込んで
いました。

トトという太陽が突然見えなくなって、呆然と立ち尽くしているような気持ちです。
おそらく、たもんもそうだったでしょう。

苦しい・・・泣きたいのに泣けない・・そんな日も多かったです。
気が狂うかもしれないと思いました。

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非公開ですが、私はmixiをしています。
その中ではもう何度も書いていて、写真も出していますが、ここでは初めて書きます。

たもんは、生まれる前から、四肢に重度の障害を持った子です。
まだかわいい盛りの4ヶ月から6ヶ月まで入院し、何度も何度も手術を受けました。
その後も戻ってきても手術の毎日。
後ろ足も手術は受けませんでしたが、骨がねじれ、曲がっていますし、寸法も足りません。

その間に学ぶべき事も学べず、リカバリも出来ず、今でも突然近づいてくるような人は
警戒しますし、攻撃的になります。
また、他犬はまずダメで、OKなのは、やまねこちゃん家の子達と、ななちゃん、
ことちゃんという、メスのドーベルマンくらいです。
自分と姿形の違う他犬種には攻撃的になります。

以前、ガウガウだと言われてちっともガウガウじゃなかったドーベルマンの女の子の扱いが
出来たのも、実はたもんがいるからです。
恐怖で攻撃に出る犬にはどうしたら良いのか、分かっているからです。

なので、そのちょっとしたコツさえ踏んでやれば、たもんは落ち着き、実はどんな人でも
普通に触れる犬でもあります。


合計9回という途方もない骨の外科手術を受けても、肘の関節はズタズタ。骨も曲がったまま。
レントゲンでも骨に見えない状態で写ります。
何人もの整形外科専門の先生が「これは・・・骨じゃない」「どうしてこの足で歩けてるのか
分からないです」と愕然とされるほどの骨です。

たくさんのプレート、ボルト。8歳になる今も入ったままです。
銀紙を丸めたようにクシャクシャにしか写らないたもんの腕の骨で、そのプレートとボルトだけが
真っ白く写ります。



私は今までたもんの足、全身の写真は出来るだけハンデが見えないものしか出していません。
ほとんど上半身だと思います。

たもんの事を知らない人にあれこれ、とやかく言われたくなかったし、現実世界でたもんを
連れていると心無い人達に、ほんとうにひどいことをたくさん言われました。

私にだって心はあります。
どうして傷つくような事を無神経に平気で言うんだろうと思うけど、言い返す気力すら
当時はありませんでした。

なのでさらにネットの世界まではもううんざり・・だったのです。

8年間、ずっとたもんの写真は問題ないものしか出していません。
トトと楽しく遊んでいる写真も、たいていはアップか、足をトリミングしています。

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この写真は今日のたもんです。
お日様を浴びて、部屋で平和そうに寝ています。
たもんが暮らすようになったこの部屋には、カーペットを敷き詰めました。
彼の足は斜めに踏み出して流れる状態で歩くので、フローリングだと滑って歩きにくいからです。

今日、たまたま私が友達からの電話をしながらベランダに出たら、たもんがサッシに前足を
かけながら追って来ようとしました。
今までは怯えて反対側に逃げるか、ケージに逃げ込んでいたのに・・・・。

でも写真(奥)でも分かるように、段差があります。
たもんは前足の手首関節が全く動かないので、健常な足の犬のようにヒョイッと飛び越えることが
できません。

困ったようにサッシの段差に前足をかけて、こちらを見ていました。

何度か「そうだよ!おいで!!」と励まして呼んでみても、頑張って来ようとするのですが、
結局諦めて座り込んでしまいました。

あんなに怖がっていた外に出ようとした。

苦しんでいたのは私だけじゃない。
たもんだって悲しいし、寂しいし、苦しかった。

たもんはウチに来た時からトトがいました。
決してベタベタするような間柄の犬達ではなかったですが、ずっと仲間だったと思います。

トトがいないこの状態は丁度、「交通量の多い交差点でいきなり信号が消えたような状態」
だと犬のプロの方に言われました。

たもんのみならず、私もまた、その交差点で呆然と立ち尽くしている状態でした。
もしかしたら立つ事も出来ず、座り込んでいたのかもしれません。

辛いのは私だけじゃない。

それでも、たもんは今日初めて私を追ってベランダへ出ようとしてくれた。
何度も何度も出ようとしてくれた。

トトをはさんで、どこか二人は向き合っているような間柄に感じていた事に対して、申し訳ない
本当にごめんなさいという気持ちになりました。

たもん、ごめんね。

痛いのが、不自由なのが当たり前で生きてきたたもん。
もう骨を切ったりする手術は出来ません。

今検討してるのは、腕に入ったプレートとボルトを抜く手術です。

もう十分すぎるほど、痛い目にあってきたたもんを、これ以上切りたくはありません。
でも皮膚にボルトが内側から干渉して、皮膚に穴が開いて常に血膿が流れる状態が続いていて、
それは本犬にも非常によくない状態です。

せめて、それだけは治してやりたい。
あとは、彼の寿命が尽きるまで、彼の足がもってほしい。
願うことはそれだけです。

常に手負いの状態の彼には「戦う」「逃げる」「迎合する」の3つの選択肢のうち、「戦う」しか
残されていません。

なので突然迫ってくる相手には吠え、それでもダメなら攻撃しようとします。
逃げることが出来ないからです。
迎合する術も知らないからです。

4ヶ月の時、手術しないと歩けなくなる(生まれる前から両前足のヒジの関節が外れ、別の骨に
くっついていました。)と言われ、安楽死でなく手術を選択したのは私です。

腕には人間と等しく、尺骨とトウ骨という2本の骨があります。
その2本の曲がった骨をどちらも完全に切断し、腕をまわし、プレートとボルトで固定します。
成長期なので残酷なまでに骨は成長し、また曲がってきます。
雑巾を絞ったように皮膚がひきつれ、手首から下が反対側を向くほどまで、彼の足は
曲がりながら成長しました。

また切断、まわして固定。

30年以上整形外科を専門にしてきた先生も
「3万例以上見てきたけど、生きてる犬は見たことがない」
と言うほど、たもんの症例は珍しく、術式もない手探り状態でした。

それでも整形外科日本一と言われる先生は、たもんを歩けるまでにしてくださいました。

これから何があっても、私は彼を最期まで面倒を見ると決意しました。
それは今後も揺るぎません。

いろいろあり、訓練士さんのお世話にも一杯なりました。
バカみたいに大きなプールを買ったのも、たもんを泳がせるためです。

今日、私を追ってくる彼を見て、泣けて仕方ありませんでした。
陰にこもっていた戸がバーンと勢いよく開いたような感じがしました。

トトに任せ、トトのおまけのように暮らしていたたもん、8年間手をかけてあげられなくて
ごめんね。
それでも私を追ってくれる彼と、これからはトトがいなくても穏やかに平和に暮らして行きたい。

トトの存在があまりにも大きすぎて、たもんに向き合えない長かった年月を取り戻すことは
出来ませんが、トトに変わらぬように彼をいっそう大切にし、彼がまた旅立つ日まで頑張って
たもんのカーちゃんをしていかなくては・・と思いました。

泣いてる場合じゃないよね。

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ついさっきまで、私は本当は何度も何度も、もう早くトトの側に行きたいと願っていました。
あまりにもの悲しみに、人から受けた恩や愛情、気遣い、優しい言葉に、私は耳を塞いで
鈍感になっていました。

心の中ではちゃんと感謝していても、口に出すことをしていなかったと思います。

ずっと日向になりながら、影になりながら支えてもらって、心から感謝します。

ありがとうございます。

一人になって、写真嫌いのたもんを撮ることは非常に難しいのですが、これから暖かい日は
外に一緒に行って、一緒に座っていようと思います。

トトが楽しんだ川や山には彼は足が悪いので連れて行ってあげられないけど、彼が行けて
警戒せず楽しめるような場所を探そうと思います。

たもんの写真がここにたくさん出せるように、たもんと一緒に歩いて行きます。

大分県の樋口動物病院院長、樋口先生、
今日、この日まで、たもんの足を歩ける足にしてくださって、ありがとうございます。
先生のお陰で、たもんは今日まで自分の意思で動くことが出来ています。
何とかかんとか、彼は最後まで歩いていけそうです。

今、たもんを診てくれている、風の動物病院院長、濱崎先生、本当にありがとうございます。
トトと同じように、彼もまた最後まで先生のお世話になりたいです。
トトのようなお手本患者では全くありませんが、どうかよろしくお願いします。

そしてここを訪れてくれる、たくさんの皆さんにも、心からの感謝を。
いつも本当にありがとうございます。

たもんはもう十分頑張ってるので、どうか「頑張れよ!」は私に言ってください。

長文、乱筆乱文、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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by totozfactory | 2012-03-16 16:44 | 犬たち猫たちのこと。