今日もトト日和 TOTO'Z FACTORY フォトグラファー&デザイナーの秋山伸子です お仕事のことや日々のあれこれを綴っています 写真のサムネイルをクリックで各記事をご覧いただけます

サインは通じない《生得的行動と相互理解への考察》

昨日のpostで、たもんが出したサインを私が全く分からなかった(当たり前だけど)事で、少し思った。
これを翻せば、犬だって「わかんねーよ!」と思ってること、一杯あるだろうな。

現在、トトとたもんがお世話になってる訓練士Hさんは、「躾に関しては一生無言と言ってもいい」という人である。
「躾(行儀)」と「訓練」は別。コマンドをかけるのは「訓練」。躾は犬の生得的行動を理解した上で、無言で行う。

この躾方法は、きっと耳や目、身体にハンデを負った犬でも充分通じる。
そしてこの理論は、獣医さんなど、犬を扱う職業全てに通用する(この理論を実践している獣医さんは一人だけ知ってる。たぶんその先生は一発も噛まれたことがないだろう)。

「アイコンタクトをとっては『いけない』」
アイコンタクトをとりましょ~という昨今の躾業界においては真逆を行く方法である。

アイコンタクトは部下がリーダーにすること。
あなたがアイコンタクトを犬にすることは、犬がリーダーだとあなた自らが言ってるのです。

躾は無言。お母さん犬が仔犬を躾けるのに、日本語話さないでしょう?道具使いますか?オヤツで釣りますか?チョークチェーンでふっ飛ばしますか?
しないでしょう。
それと一緒。
いくら言葉をかけても、通じてなければ意味がない。
あなたが全く知らない国に突然連れて行かれ、その国の言葉でベラベラ話しかけられても意味が分からないでしょう?それと同じです。

人が勝手に解釈して、「喜んでるのね」「寂しいね」「悲しいね」
犬は全くそんなこと思ってもないかもしれない。

犬の本質、生得的行動を理解せず、犬のことを分かったように擬人化するのは犬という動物にとっては大変失礼なのですと言われる。
犬の心理には、人の勝手な思惑など、紙一枚入る隙間などないのです、と言われる。

「犬は人の言うこと聞いてりゃいーんだよ。イヤでもなんでも従うのが服従」
それは犬という動物の「魂・誇(PRIDE)」を全く無視した行為だ。
犬だって、プライドがある。暴力を受けた犬はHさんはすぐ分かると言う。暴力で屈服させられた犬は常に耳を後ろに絞って人を見る。「そういう犬は心が傷ついてるんです。」心から納得して行動しているのではない。だから突発的なトラブルの時に言うことをきかない。もしくは気質の強い犬だったら本気で攻撃してくる。(吹っ飛ぶほどの力や首吊りなどの)チョークチェーンのショックも、蹴りも同じ「暴力」。絶対使ってはいけないと言われる。犬が言うことを聞いても、心から納得して服従しているのではないのだ。それは単なるプレッシャーによる抑圧、制御だ。そこに犬の誇りは存在しない。

*補足 Hさんもチョークチェーンを使うし、ショックもかける。ただ、常にチェーンはたるんだ状態、ショックはいわゆる「しゃくる」方法ではない。もともとチョークチェーンは犬の首を吊るためのものではなく、犬に合図を送るための道具だったはず。

ちなみに、家の「お騒がせ台風1号」たもん君は、Hさんに言わせると「大変気質が強い。たもんに暴力は絶対に通用しない。もし、暴力を使ったら、今度は彼は本気で来ます。扱いを間違っては絶対いけない犬です。でもとても素直な良い子です。」ということだ。
以前、友達が遊びで「片袖(防衛訓練で使う腕にはめるアレ)」を出してきて腕にはめ、その友達が「よし来い!!」と言った途端、まっすぐその片袖の真ん中に噛みつき、振り回されても絶対離さなかった。「生まれて初めて」見せたにも関わらず、だ。その友達もびっくりしていた。私もその迫力に後ろで見ていて怖かった。たもんに遊びは通用しない。彼はいつだって本気全開君らしい(迷惑)。それ以来、遊びでもそういうものを見せることはやめた。プロがきちんと教えてこそ、の道具だと分かったから。
たもんの心を部下として服従させるのは、暴力では絶対ダメだということだ。例えば死ぬまで殴ったとしても、彼の心は屈服しないだろう。もっときちんと部下として行儀が出来るようになれば、彼は賢く誇り高い犬になると思うが、今は単なるお騒がせ台風君である。それでも随分変わったのだ。

自分の犬の「本当」を知りたい。
勝手に解釈して誤解したままこちらの都合だけで付き合うのはイヤだ。それは死ぬまで分かり合えないって事だから。
そう思って、Hさんに教わっている。

教わっていくと世間の犬のサインが良く分かる。
「フセ」と言われて犬が伏せる。ぼわ~~っと大きなアクビをする。
それは「人間さん、落ち着いてください」と言ってるのではない。もちろん眠いのでもない。
「ちっ、仕方ない」と舌打ちをしてるのだ。
舌なめずりも一緒。「ちっ。」
でもそれでいい、と言われる。そうやって犬達は、自分で納得し、鬱憤を晴らし、服従するのだ。

可愛いチワワがク~ンク~ンと鼻を鳴らし、テレビさながらにウルウルで見つめる。
「ママ~寂しいよ、こっち来てよ」と言ってるのではない。
「人間さんよ、私達犬の世界に来い」と言ってるのだ。「仲間になれ」と。

それではいけない。正しい人と犬との関係を築くために「躾」をし、正しい群れにならなくてはいけない。(それは即ち「相互理解」)

家族の特定の人しか言うことをきかない。練習では出来るのに競技会に出すと脱走を繰り返す。訓練士のいう事しかきかない(競技会本番ではそれも裏切る)。同じテクニックとショック、声かけが出来ないと犬が動かない。競技会では家族は隠れて見ていろと言われる。どうして家族の目の前で堂々と落ち着いて出来ないのか。
競技会では素晴らしい犬も、家に戻れば破壊を尽くし、力の限り引っ張り歩く。飛びつく。家族の言うことは全くきかない。リードを放したら勝手に走り回り呼んでも来ない。等々
それは全て人と犬とが正しい姿になってないからだ。

躾(行儀)を入れたあと、高等訓練はいくらでも入る。
トトが6歳?そんなの関係ありません。日本犬?全く関係ありません。犬種、年齢、全く関係ないといつも言われる。犬種で分けたときから、間違いが始まるのだと言われる。
確かにドーベルマンはカミソリのようなところがある。だからと言ってガチャガチャしてるのが当たり前じゃない。部屋にいる時は人のそばで落ち着いて過ごせて当たり前。

訓練を入れている犬で、頭打ちをしてしまう犬は、力で抑えられているか、訓練で叱られたか。
訓練は絶対に叱ってはいけない。叱るとその科目は伸びなくなる。
トトはHさんに教わって、ものの数分で「ヘタレだから出来ない」「こういう弱い犬には強制訓練は無理だから」といわれたダンベルが出来た。Hさんは一度も叱らず、小さな声でヨシヨシと褒めてただけ。
トトをヘタレじゃないと言ってくれたのはHさんだけだ。落ち着いているだけで、弱い犬じゃない、度胸もあります、と言ってくれる。

でもまず行儀。行儀なくして人と犬の正しい姿はありえない。
正しく犬が部下になったら、あなたの横から絶対に前には出ない。法律があるから仕方ないけど、街中だろうが雑踏だろうが、リードなんかなくても横から離れないのが犬という動物です。
「ツケ」も「スワレ」も「フセ」も、わざわざ苦労して教えなくても、犬はみんな遺伝子に持っている。だからどの犬も同じ反応になる。声をかけなくてもどの犬も横をついて歩く。排泄のときだけ少し離れて横にそれ、排泄が終わったら戻ってきて横に座る。また横をついて歩く。コマンドは一切必要ない。
警戒も吠えることも、それはリーダーの仕事。部下になった犬は警戒も吠えることもしない。多頭飼いでケンカになることもあるはずがない。

この方法で躾けられた犬達は、平常心で部下としての行動をとるようになる。家族全員をメッタ噛みの血祭りに上げた犬も、シャイな犬も。
(関西、いや、日本広しと言えど、はっきりと攻撃意識を持って噛みつく犬を、暴力一切なしで躾られるのはHさんくらいしかいないと思う。)
Hさんはもともと警察犬の訓練士をやっていた人だ。日本一にもなったが、達成感のようなものを感じることが出来なかったそうだ。体罰を使った厳しい訓練。性能、反応の良い犬だけがヨシとされる。でも行儀は最悪。それは正しいことなのだろうか?と疑問は膨らむばかりだったという。そして自分一人で研究し、この理論を確立し今に至っている。
犬を萎縮させない。犬のPRIDEを傷つけない。これこそが陽性強化なのではないだろうか。

そういうHさんのもとに、最近ポツポツと訪ねて、犬を見てもらう人が増えたようだ。
これもしおんさんのいつも いっしょに*の「お山の留学レポート」のお陰かな。
何よりも、あの2頭の表情が物語っているものね。
あの子達も、とても穏やかに明るく過ごしている。きっと卒業も近いはず。

今年始めに体調を崩して、ちょっとヨボってる仙人。
どうか元気で現役を続けて下さいね。後進の育成はまだまだですからね。
うちの犬達もまだまだですから。

*この文章は特定の訓練士さんを非難したり否定したりするものではありません。いろんなやり方があるだろうし、あって然るべきだと思います。Hさんのやり方もそういう選択肢の一つです。どの方法を選択するか、それはユーザーである飼い主が決めること。ただ、あまりにもひどい暴力を振るったり、出来ないのを全て犬や飼い主の責任に押し付けている訓練士さんがいることも残念ですが事実です。
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Commented by 楽器ー。 at 2005-07-31 03:08 x
今日、H先生の所へ行ってた所です。
今月の頭にターボと実家へ長期滞在した時に彼がやらかした数々の事
私の父との事(父にガウりまくっていました)を相談してきました。
私的には留学も・・・と思っていたのですが、
H先生に「ここまで出来ているから、あなたにもできるはず」と
おしゃって頂き、暫くの間は毎週通う事にしました。
私とターボの相互理解は、まだまだだと思う今日この頃です。

たもん君、順調に回復しているようですね。
早く元気一杯のたもん君になりますように。
Commented by totozfactory at 2005-07-31 03:59
楽器ー。さん>>
Hさんは楽器ー。さんなら必ず出来るとの判断での発言だと思います。私も最初は、出来るだけコマメに時間を見つけては通ってました。私自身も、まだまだ相互理解が出来ていません。随分マシになったとはいえ、まだうちの犬達もリーダーの行動を見せます。時間はかかるけど、出来ることから地道に一つずつやってます。
たもんは元気一杯ですよ~。もう元気はいいです。飼い主お腹一杯です(涙)。
Commented by しおん at 2005-07-31 11:27 x
心からの服従か・・・うん。とてもわかる。
ベリーが8ヶ月ぐらいの頃、外で数メートルはなれてフセを命じたら無視。
何度か命令しても無視するので近づいて蹴った。でも、彼女は頑として座り続ける。蹴る、無視、蹴る・・・の繰り返し。ノーリードなので逃げればいいのにベリーは蹴られることわかってて毅然とそこに座り続けた。
驚いたよ、情けなくて涙が出た・・・あの頑固さに。最後にあきらめたのは私のほうだった。
でも、今思えばトンだ間違いだよ。
ベリーの尊厳を本当に傷つけてきた。ベリーは犬として正しかったんだな。
部下の言うことなんか死んでも聞かない!このまま蹴り殺されようとかまわん!という犬としての自分を曲げなかったんだろうね。

今思うとたくさんの間違いが見えてくるよ。
Commented by totozfactory at 2005-07-31 21:48
しおんさん>>
Hさんの話を聞いて、彼ら「犬」という動物を見ると、よく分かる。あそこに預けられている様々な犬種。ダックスもポメラニアンも、大きなバーニーズも柴犬も、みんなあの身体の中には「太古野生だった頃の誇り」が脈々と息づいている。どんなに人に改良されても、あのプライドは色褪せることはないって。人間なんぞには絶対に侵食されない。「あ、今通じた」と思う瞬間こそが、彼らと暮らす最大の喜びなのだとしたら、もっと彼らを分かりたい。自分が暮らす犬という動物がどんなに素晴らしいか、私はもっと分かりたいんだ。
ベリーにもその遺伝子が生きているんだよ。
by totozfactory | 2005-07-30 21:59 | 犬のしつけ・訓練 | Comments(4)