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今日もトト日和 TOTO'Z FACTORY フォトグラファー&デザイナーの秋山伸子です お仕事のことや日々のあれこれを綴っています 写真のサムネイルをクリックで各記事をご覧いただけます

依存と支配

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部屋の外にいると、たいていこうやって座ったりフセたりして待ってるたもちんちん。
(諦めるとひっくり返って寝コケている)

最近になってようやくある程度の時間のお留守番が出来るようになりました。
以前は私がこの部屋から出るのさえ、彼は許さなかった、と言うと、たいていの人に驚かれます。



台所や、トイレ、猫部屋に入るのは最初から彼はOKでした。
なぜなら、そこで何をしているのか分かっているし、長時間いないのも知ってるから。
でもこの部屋の隣にある仕事部屋(寝室)に入るのは、ものすごくイヤがって必ず吠えて呼んでました。
当然、玄関から外に出るのさえ、ダメ。
そういう「彼が行って欲しくない場所」に私が行くと、「ピーピー・・ク~ンク~ン」なんて可愛い声ではなく(ちなみに、この可愛い声も支配行動の一つです)、「うぉんうぉん!!!!」と、野太い大きな声で、ず~~~~っと吠え続けます。

私はどこにも行けず、買い物にも行けず、平日は日中は彼とリビングに居て、なるべく睡眠をとるようにし、夜中に仕事。休日にはまとめ買いをしに行くという、「引きこもり生活」が、延々と続いたのです。

訓練所ではそういった行動は見せないので、家で躾けるしかありません。
当時、彼はフリーにしておくと、ありとあらゆる物を咥えて、破壊し、好き勝手してました。
この家は私達の家ではなく、彼の王国だったのですから、勝手気ままにしても当然です。
これは車の中でもやっていて、必ず前の座席からいろいろ持って行き、後ろで破壊していました。もちろん、私が車から離れるのさえ、彼は許さず(部下がリーダーを放っておいて、勝手にどこかに行く行為は許されるはずがない)、やっぱり大きな声で吠え続けました。

堀さんに、
「物を持って行ったり破壊したりする行為も、彼がリーダーだから。外出する練習をしなさい。」と言われました。

吠えたら躾ける、という行動をずっと繰り返し、部屋を出た程度では吠えなくなると、今度は外に行く躾です。
玄関から出て、しばらく立っている。
吠えたら戻って躾。
階段から降りてまたしばらく待っている。
吠えたら戻って躾。
今度はガレージに行き、車のエンジンをかけて、また外に立っている。
吠えたら戻って躾。

繰り返すうちに、出てすぐは吠えなくなりました。
彼も考えたもので、今度はある程度の時間が経つと、吠えて呼ぶようになったのです。
それも外出して40分後とか。
両親には吠えたら戻るから電話をして、と頼んで、外出しました(それでもせいぜい買い物程度)。
結局、仕事の打ち合わせや遠出は出来ません。1時間が限界でした。

この「外出したら吠えて呼ぶ」という行為だけを直す事は出来ません。

なぜなら、彼は「支配する者」で私は「支配される者」だからです。
この関係が逆転しない限り、彼のこの行動はなくなりません。

リーダーは、命をかけて部下を守ります。
群れは常に固まっており、全員の所在が確認できること、群れの行動を決めるのは必ずリーダーであること。
リーダーは常に群れ全体を把握し、外部からの敵の攻撃やテリトリーへの進入を警戒しています。

なのに、部下が勝手にどこか知らない場所に行ってしまう。
リーダーとしては許されない行為です。

留守番させると犬が家の中をメチャメチャに破壊したり、ウンチやオシッコをする問題行動は、ここから来ています。

ジャン=フェネルの「犬のことばがきこえる」にも書かれていますが、人で例えると、2歳の子供がお母さんが見ていない間に、勝手にドアを開けてどこかへ行ってしまった、に等しい行為です。
お母さんはパニックになります。
それと同じで、リーダー犬もパニックに陥るのです。
上記のような問題行動は、全てこの混乱した心理から起こされる行動です。

2歳の子供が無事戻ってきた時、お母さんは泣いて喜ぶでしょうが、犬のリーダーは泣いて喜んではくれません。
飛びつく、噛みつく、吠え掛かる。大変な興奮状態です。

それを「まあ、○○ちゃん、ママがいなかったから寂しかったのね~」とつい考えがちですが、彼らは「どこに勝手に行ってたんだ!」と怒ったり文句を言っているのです。
噛みつく行為は部下に与える「制裁行動」です。
たもんも、当時はよろけるほど飛びつき、体当たりをし、歯を当てました。
「バカやろう!勝手にどこかに行くな!」と怒っていたのです。

噛みつかないまでも、尻尾を激しく振り、飛びつく行為も人はポジティブに捉えがちですが、犬にしてみれば文句を言っている行動なのです。

その他日常生活全般の躾を並行してやっていくうちに、「支配行動」は「支配される者の行動」へとシフトして行きます。
これは力による強制や声での恫喝では直りません。犬が自然に心から納得し、服従していかないと変化はしないのです。

たもんも少しずつですが変化をして行きました。

仕事部屋にいても、吠えて呼ぶことはやめ、今度はドアを叩いてみたり、トイレをしてみたり、雑誌をバサッと落としてみたり。
破壊活動というよりは、呼ぶためにこういった物を利用するようになりました。

それも次第に収まり、黙って横になって待っているようになりました。

現在は、トイレはしてしまうものの、4時間以上の外出も、トトが一緒にいれば吠えることもなく、黙って寝ていると思います。
昨日もジャックのお家に私だけ行ってましたが、全く問題はありませんでした。
雑誌も、テレビのリモコンも、ティッシュの箱も何一つ動かされず、オシッコがトイレにしてあっただけでした。

庭に出している時も、私だけが車に乗り込んでも、以前は激しく吠えて呼んでいたのに、今は吠えません。ゲートから顔だけ出して「あれ~連れて行ってくれないのかよ~」と見送っています。

同じ部屋にいると、彼は必ずベッタリと私に体をひっつけてフセたり、齧るおもちゃを齧ったりしています。
これは「支配行動」と「依存」、「甘え」が含まれた行動です。

支配行動が強い時は、体の一部を私の足に乗っけたりします。
私が立っている横でフセても、やっぱり体の一部を私の足の上に乗せたりします。
そういう時は、黙ってそっと横にずれます。
「お前の支配は受けない」という意思が伝わるので、彼はそれ以上ひつこく乗せてはきません。

以前、彼が完全にリーダーだった時は、もっとも強いのがこの支配行動でした。
依存も甘えも入っていたでしょうが、支配が強いため、私へ与える制裁行動も強いものがあったのです。

現在は、多少支配行動は見せますが、飛びつく、噛みつくなどの行為はしません。
飛びつこうかというアクションをしそうになる時もありますが、私が制止するとすぐやめます。

そして、齧るおもちゃを口に咥え、「こっちへおいで」と自分が誘導したい場所と私の間を円を描くように歩きます。
そういう行動も無視するとそのうち諦めます。
その時に、私は私がくつろぎたい場所へ行くだけです。彼は同じようにやってきて、機嫌よく横にフセ、くっつきながらおもちゃを齧り、満足したら眠ります。

物品への意欲が強い犬は「口」を使う行動が強く、何かを齧る行為で自分のストレス(行儀よくじっとしていないといけない)を発散します。
ストレスの代替行為ですが、今のところ私はこれを止めていません。
以前は狂ったように毛布を噛み、クチュクチュするだけならまだしも、奥歯で穴があくほど噛んでいました。
それも、現在はしなくなりました。
自分だけケージにハウスを命じられた時は、ストレスから毛布を噛もうとしますが、「やめて」というとやめるようになりました。
以前の聞く耳を全く持たない、異次元の世界に飛んで行ってしまうような目はもうしなくなりました。
(以前は無理やり止めるとガアッ!!と怒って歯をむいたりもしたのです)

彼は私への依存も強い犬だと感じます。それは彼のある事情で仕方ないと堀さんも言います。
それでも私は出来るだけ彼の強い依存も自然な形にしたいと思っています。

支配行動と甘えの行動を微妙ですが見分け、「ここまでは許す、ここからはいけない」と毅然と示す事で、彼の支配行動は目に見えて少なくなりました。

よく、堀さんの躾をこれからしていこうという人は「ずっと甘えさせられないのですか?ずっとこうやって声もかけず、目も見ず、やっていかないといけないと思うと、結構しんどいですね。」とため息をつかれます。

それは違うことが分かっていただけたでしょうか。

甘えさせてもいい、オヤツを一緒に食べても構わないし、話しかけても構わない。一緒に寝る事だって堀さんは否定しません。
でもその前に、この関係が築けていない限り、一方的な犬の支配に終わってしまうのです。

犬は「支配する者」(シーザー=ミランが言うエネルギーの高い者)と「支配される者」(エネルギーの低い者)の2つしか区別出来ないのです。

人がその犬よりエネルギーの高い、支配する者にならない限り、こちらがいくら「愛」を与えたと思っても、リーダーにとっては無用のものです。家来から愛され、尽くされるのは当然だからです。
たもんは、当初は頭を撫でられるのさえ、嫌がりました。
頭を撫でるという行為は、人から犬への「支配行動」だからです。

「甘えさせてもいい。でも甘やかしてはいけない。子供も犬も一緒。」
buumiも言っていました。

彼らはとことんきっちりと区別をしています。

知らず知らずのうちに、私は支配されていました。完全なる部下の立場に立っていたのです。
気質の強いたもんは、一旦なったリーダーを降りるのはよほど彼が納得しないとしません。
現在も完全には部下の認識はないかもしれません。
細かく躾をしてくる私には何とか言う事をきくようになりましたが、接する時間も少なく、積極的に躾もしないけいちゃんのいう事はききません。今でも文句があると歯を当てます。
ガウガウ当時は、彼の両腕は歯型だらけ。今でも肩や背中にはくっきりと歯型の傷痕が残っていますが、現在はそこまでは噛みついたりはせず、カツッ!と手の甲に歯を当てます。
こういう制裁行動も、こちらがきちんと躾をすると改善していくはずです。
(結局人の問題)

群れの人間にも、こういうきつい行動を取るのですから、よその人にはやっぱり危ないのです。
今でも見つめながらズンズン寄って来るような人には、激しく吠え掛かり、手を出すと噛む可能性は高いと思います(そういう機会はまずないようにはしていますが)。

自分の群れ以外は敵と見なすのが、自然な本能です。
その時示される行動「闘争」「逃走」「回避」「服従」のどれを選ぶかは、その犬の気質によって違います。
うちの犬で言うと、トトは「回避」をまず選ぶ犬です。
知らない犬が寄ってきても、吠え掛かっても、まず知らん顔します。
威嚇する時もありますが、私は威嚇は無用な闘争をしないための「回避」の一つの行動だと思っています。
たもんは「闘争」か「回避」を選ぶでしょう。
いかにガウガウでも、自分が闘って勝てない相手には闘争は選びません。

以前グレートデンのお友達に誘ってもらい、ペンションに泊まったときも、彼はデン達には「回避」の行動をとりました。
そのデン達を一つの群れと見なしたのです。(それぞれに飼い主がいますが、たもんは一つのグループと認識していました)

そういう行動も、私が事前に制御し、勝手に攻撃に行かないようにすることを繰り返すうち、声をかけるだけで我慢できるようになるはずです。
現在は事前に落ち着かせ、フセや座れをさせておくと、目の前にノーリードの小型犬が走ってきても、我慢するようになりました。
人に対しても、最初に落ち着かせて部下の心にしておくと、攻撃的な行為はしません。知らん顔するようになりました。

シーザー=ミランは、犬が他の群れに取る行動として上記の4つを挙げていましたが、堀さんはそこにもう一つ「支配」も加えています。
人から見れば愛想している姿。尻尾を振り、体をもたせかけたり、可愛いアクションを起こす犬。
でもそれは「あなたも私の仲間に入りなさい」という支配行動です。

他人の犬を可愛い、撫でたいと思っても、まず飼い主に声をかけなくてはいけないと言うのは、先に犬を触ってしまう行為は、その群のリーダーであるべき人を無視する行為です。
他人までもが、「群れのリーダーはあなた(犬)ですよ。おまけに私もあなたの支配を受けますよ」と言っているのと同じ行為なのです。

ジャン=フェネルの「アミシアン・ボンディング」ではこれを利用し、まずは犬を無視し、飼い主とリラックスして話しをすることで、「お前はこの群れのリーダーではない。ましてや私はお前に支配される存在でもない」ということを犬に言っているのです。

攻撃性のある犬の相談をたまに受けますが、私はそういう方に必ず言う事は、
「人が変わらない限り、犬は絶対変わりません。
人が変わる限り、犬は絶対変わります。
犬にばかり求めたり、押し付けても、解決はしません。」

てっとり早く、痛めつける道具や、パワーでもって抑えつけたとしても、心から納得しない限り、本当には犬は変わらない(落ち着いた犬にならない)というのがお分かりいただけると思います。


少しずつ。少しずつ。諦めない忍耐力が必要です。
by totozfactory | 2007-02-09 12:34 | 犬のしつけ・訓練